日本が誇る 傘の技術

2016.06.01

日本が誇る傘の技術

日本洋傘振興協議会(JUPA)に加盟する日本の洋傘メーカーが作る傘は、機能性やデザイン性の面で、極めて高い技術が用いられています。軽量や耐風機能、遮熱、遮光などの最先端技術から、日本古来の伝統技法まで実に多彩。本号では、そうした日本が誇る傘の技術を切り口に、JUPA加盟各社ならではの優れた傘を紹介します。
 

01
軽量コンパクト

 普段の日も旅行などでも、バッグに気軽に入れて持ち歩ける軽量コンパクトな折りたたみ傘は、小売店や百貨店の洋傘売場で最も売れているアイテムの一つ。最近は一日の中で天候が急転して雨になることも多く、折りたたみ傘を常に携帯する人が増えている。そうしたニーズに応え、軽さやコンパクト性を追求した折りたたみ傘が登場。国内の消費者だけでなく、近年急増するインバウンド客にも人気となりそうだ。
 
 
人気のシリーズが色柄を大幅増
昨シーズンヒットしたMACKINTOSH PHILOSOPHYの折りたたみ傘が色柄を大幅に増やし、今年も百貨店を中心に店頭に並んでいる。重量は50cmが82g〜、55cmが94g〜と軽量。たたむとスリム&コンパクトになり、常時バッグに入れて持ち歩ける。[MACKINTOSH PHILOSOPHY](ムーンバット 50cm・55cm  ¥7,560〜¥9,180)
 
5本骨の軽量折りたたみ傘
軽い、細い、小さいをより一層進化させた5本骨の軽量傘。傘生地には細番手7Dの東レ エアータスティックを使用。
重量は僅か76g。豊富なカラーバリエーションとともに今季デビュー[Aquascutum](オーロラ ¥8,640)
 
     

02
ほぐし織

 ほぐし織とは、たて糸がばらばらにならない程度によこ糸を粗く織り(仮織)、その上から柄をプリントした後に仮織したよこ糸を取り除き、本織する日本の伝統技法。生地をほぐしながらよこ糸を取り除くことから、ほぐし織の名が付いた。色や柄の柔らかさ、温かみ、奥行きを楽しめることが特徴だ。この伝統技法を受け継ぎ、現代風のデザインにアレンジした傘が展開されている。伝統といまのトレンドを融合させた、日本を代表する優美な傘の一つ。
 
 
 
斬新な裏生地のほぐし織
モンブランヤマグチの代名詞でもあるほぐし織傘。今季は裏生地にほぐし織の猫柄を使った斬新な提案。手作業で染める「手捺染」の技法を採用した、日本の職人が腕によりをかけた逸品。(モンブランヤマグチ ¥23,760)
 
北欧デザインとほぐし織の共演
日本で100年以上の歴史を誇るほぐし織と、北欧をイメージしたデザインを掛け合わせた斬新なほぐし織傘。対比的なデザインがユニーク。大人の女性に似合う洗練された一本。[Rei gasa(麗傘)](オーロラ ¥21,600)
 

03
高級生地

 ドレスなどに使われるオーガンジー生地や、模様を織り込んだジャカード生地など、高級な傘地を使って作った、こだわりの傘。オーガンジー生地の傘は薄くて軽いのにコシがあり、高いシャリ感を併せ持つ、他では見られないエレガントな仕上がり。一方、ジャカード生地の傘は手元に傘地と同じ色を用いたバイカラーの合皮を使い、細部にお洒落な雰囲気を漂わせる。
 
 
ビビッドカラーのジャカード生地
気分が明るくなるビビッドカラーのジャカード生地を使用。細かいドットが織り込まれ、傘地と同色のバイカラーの合皮手元と相まって、とてもお洒落な雰囲気に。骨は全て鉄骨を採用し、強度を高めた。長傘と折りたたみ傘を展開。(柴田 ¥16,200)
 
 
高いシャリ感があるオーガンジー
オーガンジー生地の特性を活かすため、防水・はっ水コーティングには不利なモノフィラメント糸の生地をあえて使用したジャンプ傘。薄くて軽いのにコシがあり、独特の光沢や透明感と高いシャリ感を持たせた。たたみやすく、扱いやすいのも特徴。
[eight-Tokyo](エイト ¥8,100)

04
耐風傘

 風の力を骨のしなりや、骨と骨をつなぐ「ダボ」の特殊な素材・構造などにより逃がす。万が一風にあおられて傘地がひっくり返り「おちょこ」になっても、すぐに元の状態に復元できる――。このように風に対する耐性を持つのが耐風傘だ。他国では見られない日本独自の傘であり、JUPA加盟各社は耐風傘の開発や生産に注力している。ただし、強風時には差さないこと。
 
人気の猫シリーズの耐風傘
ニューヨーク在住の画家・久下貴史氏による、人気の猫シリーズの傘。イタリアの観光地、カンポ広場に祭事のための衣装を着けて集結した愛猫たちを描いた。8小間の柄を一枚張りに見えるように張り合わせた。風に強い耐風骨のジャンプ傘。[Manhattaner’s](カネイ ¥10,800)
 
総合力が高い耐風骨のジャンプ傘
水玉をベースに、グラデーションによる配色を花柄と蝶柄に重ねた耐風骨のジャンプ傘。グラデーションは今季ファッションのキーワード。UV防止加工も施されている。ファッション性と豊富な機能を併せ持つ、総合力の高い雨傘。
[HANAE MORI](真田商事 ¥6,480) 
 

05
晴れでも雨でもOK


 近年、雨用の傘に紫外線防止加工を施し、日傘としても使える製品が人気だ。日本洋傘振興協議会(JUPA)では、「晴雨兼用傘」として分類している。さらに、今では光を遮る「遮光」や暑さを遮る「遮熱」の加工を施したタイプも登場。JUPAに加盟する会員企業は、耐久性や耐漏水性、紫外線防止や遮光、遮熱性能に関する厳格な品質規定を守り、公的検査機関の試験に合格した傘を流通させているため、安心して使うことができる。
 
 
軽量生地の小花プリント傘
軽量のポリエステル生地にUV防止加工、遮光・遮熱のラミネート加工を施した、小花プリントの婦人傘。紫外線、暑さが気になるこの季節、雨のち晴れの日にも最適。
[東京プリント](カネイ ¥16,200)
 
通常より5cm大きい大判サイズ
オーロラと東レの共同開発生地「サマーシールド」を採用。通常は50cmだが、それより5cm大きい55㎝のラージサイズが新登場。1級遮光、遮熱、UVカット機能が付き、本格的な雨にも対応。たたんだ姿も涼しげでキュート。[BLAO](オーロラ ¥12,960)

06
1枚張りプリント

 1枚の傘生地を骨に張った「1枚張り」の傘。原画を忠実に再現でき、まるで一つの作品のように仕上げられることが利点だ。しかし、1枚の傘生地を骨に張るには、骨の材質、湾曲具合などに合わせてプリントの位置やスリットの大きさを設計する高度な技術が不可欠。寸分の狂いも無い緻密な設計が、実に見事だ。
 
 
源氏物語絵巻を緻密に表現
源氏物語絵巻「若紫」の図柄を描いた1枚の傘生地を16本の骨に張った。16方向のバイアスに合わせてプリントの位置やスリットの大きさを巧みに設計。
[eight-Tokyo](エイト ¥27,000)
 
花ブーケの1枚張り傘
八角形の傘カバーをアートキャンバスに、花ブーケをプリント。移行昇華による色移りや傘カバーからの漏水、伝水を軽減させる加工技法が施されている。
[東京プリント](カネイ ¥21,600)
 
 
     

07
甲州織

 400年前の江戸時代から、甲斐の国・山梨は織物の一大産地として発展してきた。特徴は糸を先に染めて織る「先染」の技法を用いることで、織物は深み、独特の色の変化を成す。その伝統的な甲州織の生地を使った傘を、JUPAの会員企業は作り、世に送り出している。
 
 
絹紬先染織の高級傘
養蚕の絹糸を用い、先染による甲州の伝統技法によって織り上げられた、やや褐色を帯びた上品な小幅織物を使用。自然な光沢が高級感を漂わせる。裏地はストライプ。日本製。(カネイ ¥41,040)
 
 
甲州織の定番チェック柄
甲州織の日本製の傘。定番感のある落ち着きあるチェック柄は、多くの女性から支持を集めそう。
(ブロンズ ¥12,960)
 

08
高はっ水

 通常、雨傘は生地の表面に「はっ水加工」、裏面に「耐水加工」が施され、二重の防御で雨粒の侵入を防ぐ。表面ははっ水剤に含まれる成分が毛羽立ち、ハスの葉の表面に細かい毛が密集しているような状態になり、水をはじく。裏面は樹脂のコーティングで被膜を張った状態になり、水を通さない。JUPA会員企業の傘は、はっ水、耐水の試験に合格した生地を使っているため、安心だ。特に最近ははっ水性を高めた傘が話題を呼んでいる。
 
 
 
帝人と共同企画した高はっ水生地
帝人フロンティアが開発したポリエステル製の高はっ水素材「デルタ®WV」の生地を使用。生地表面に付着した水滴が球状になりやすく、水切れが良い。生地そのものにはっ水効果があるため、長期間使用しても高いはっ水機能が持続する。[CARVEN ROND POINT](ムーンバット ¥12,960)
 
速乾する軽量ジャンプ傘
紳士傘で好評のはっ水性が高い素材「通勤快滴」シリーズの生地を使ったスタイリッシュな婦人傘が、新ブランド「英都」として登場。水切れが良く、速乾する。ジャンプ式ながらいままでにない細さと軽さ(215g)を実現。黒など全5色。
[英都レディス](エイト ¥7,560)

09
フリル

 フリルは毎年女性の間で不動の人気を誇る装飾だが、今季の新作洋傘でも大きなテーマだ。洋傘の縁をフリルで飾り、エレガントさと可愛らしさを両立させている。たたんだときに、手元付近にまるで花束のようにボリューム感が出るため、差さずに持ち歩く時もファッションのアクセントになる。差して良し、持って良しの完成度の高い逸品。
 
 
チェックと無地のダブルフリル
オーロラが創業120周年を記念してスタートさせた新ブランド「BLAO」。今季は多くの女性が好む「フリル」がテーマの一つ。1級遮光、遮熱、UVカット、雨対応の四つの機能が付く。[BLAO](オーロラ ¥10,800)
 
カラフルなフリルで装飾
世界が注目するパリ発のブランド「CARVEN ROND POINT」の洋傘が今季から新たに登場。ブランドの特徴であるモノトーンカラーをベースに、カラフルなフリルで装飾。
[CARVEN ROND POINT](ムーンバット ¥12,960)
     


10
多間傘

 長傘の場合、標準的な親骨(生地を張る骨)の本数は8本。一方で、和の風合いを出すことなどを目的に、この親骨の本数を多くしたものが「多間傘」だ。親骨が10本以上の傘のことを指し、JUPA会員企業からは、12本、16本、24本などの多間傘が提供されている。別名「多骨傘」ともいい、他国では見られない日本特有の傘。骨の本数が多い分、丈夫であることもメリットだ。
 
 
ストライプ柄の斬新な多間傘
2016年シーズンのビッグトレンドの一つがグラフィカルなストライプ柄。マルチカラーストライプのタッキースタイルに16間の多間傘を組み合わせた斬新なアイテム。
[eight-Tokyo](エイト ¥14,040)
 
京友禅の生地を用いた12間の多間傘
創業460年の京友禅の老舗「千總」とのコラボレーションによる洋傘。所蔵するアーカイブから起こした新柄が今季登場。インバウンド向けに需要が伸びそう。
[CHISO](ムーンバット ¥21,600)
     

11
アンティーク

 アンティークが息の長いトレンドとなる中、昔のファブリックの資料の中から秀逸な色柄を探索し、傘地として復刻させた製品が人気を呼んでいる。古き良きものを現代風にアレンジする、いわば“温故知新”のデザイン力が光る。
 
アンティークな花柄をリメイク
オーロラが創業120周年を記念してスタートさせた、上品でクラシカルなデザインが魅力のブランド「EOS(エオス)」。“大人のフラワー”をテーマに、アンティークな柄をリメイク。[EOS](オーロラ ¥16,200)
 

12
開閉がラク

 長傘のように開閉がスムーズでラクであるにもかかわらず、スリムでコンパクトなため、バッグにもすっぽり入る折りたたみ傘。「開きやすく、たたみやすい傘を」というユーザーの声に応えた製品で、まさに使いやすさを極めた傘だといえる。
 
開きやすく、たたみやすい
開きやすく、楽にたためることから「楽折STYLE」と名付けられた骨を採用。夏に着る開放的でデザイン性のある婦人服のことを指す「Sun dress(サンドレス)」をイメージしたパラソル。1級遮光、遮熱、UVカット機能付きで、雨にも対応。6月末~7月頭に店頭に並ぶ予定。2WAYショートタイプもあり。
[Sun dress](ムーンバット ¥8,640)
 


13
高級紳士傘


 JUPA会員企業は、生地や骨などの素材から、フォルム、色柄などのデザインまで、全てにこだわり抜いた紳士傘を展開している。洗練された雰囲気が漂い、雨の日のトータルコーディネートに、自信と風格を与える心強いアイテムになる。大切な仕事、勝負のかかった商談などに備え、選りすぐりの1本を手にしたい。
 
 
クレリックシャツを彷彿させる雨傘
英国を代表する伝統的な柄であるアーガイルを高級傘生地甲州織で忠実に再現。白い手元とのカラーコーディネートはクレリックシャツを彷彿させるファッション性の高い雨傘。
(市原 ¥14,040)
 
 
ビジネスで重宝する多機能傘
ヘリンボーン柄のジャガード生地を使用。70cmの大判サイズのため、雨から鞄なども含めてカバーできる。ジャンプ傘であり、UV防止加工、耐風骨も採用。ビジネスシーンでマルチに活躍しそうな多機能傘。
[NEWYORKER](真田商事 ¥7,560)  
 
   
英国紳士の気分を味わえる
英国紳士の必携品だった傘のクラフトマンシップを誠実に受け継ぎ、日本の職人による高品質な日本製洋傘を製造する新ブランド「英都」が今季デビュー。カラフルで立体的に織られたストライプが、光の当たり具合によって様々な表情を見せる。
[英都メンズ](エイト ¥16,200)
 
   

※価格は全て税込です。※ここで紹介した製品以外にも、JUPA会員企業による新作洋傘は多数あります。“JUPAマーク”を目印に、ぜひ、店頭でお確かめください。
 


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