2016年春夏新作洋傘 各メーカーの最新動向

　2016年に創業120年を迎えるオーロラでは、記念として2つのオリジナルブランドがデビュー。1つは“大人のフラワー”をテーマにアンティークな柄をリメイクした、上品でクラシカルなデザインの「EOS（エオス）」。商品は同社の新潟工場で生産し、プレステージラインとして大人の女性を対象に展開する（a）。もう1つは、トレンド感のあるデザインと高い機能性を併せ持つ「BLAO（ブラオ）」。今春はデニムをデザインに取り入れている（b）。一方、120周年の限定モデルとして、往時を象徴する社交場の鹿鳴館を彩った女性たちを彷彿とさせ、さらに時代背景を捉えて生地に富岡シルクを使うなど、スタイルと素材にこだわり、クラシカルと現代を融合した商品を一部の百貨店で展開する（c）。

 

　ムーンバットからは、世界が注目するパリ発のブランド「CARVEN（カルヴェン）」の洋傘が今季より新たに登場する。CARVENは1945年にオートクチュール（高級仕立て服）で始まり、2010年からプレタポルテ（高級既製服）もスタート。洋傘でもブランドの特徴であるモノトーンカラーをポイントに、新鮮でスポーティーなスタイルを提案する(d)。もう1つデビューするブランドが「FULTON（フルトン）」だ(e)。スケルトン生地と「バードゲージ」と呼ばれるフォルムが代名詞。英国のエリザベス女王が愛用することでも知られている。創業460年の京友禅の老舗「千總」とのコラボレーションによる洋傘では、所蔵するアーカイブから起こした新柄(f)が加わり、インバウント向けにも需要が伸びそうだ。

 

　真田商事では、ドットやストライプを効果的に用いたエレガンスな新作が目立つ。主力ブランドの1つである「HANAE MORI（ハナエモリ）」からは、水玉をベースに、花柄や蝶柄のグラデーションを重ねた優美なデザインが登場（g）。人気のNEWYORKER（ニューヨーカー）の新作は、教会をイメージしたドゥオモ柄と縁ストライプのコンビに注目（h）。いずれも大人の女性にふさわしいシックで上品な仕上がりだ。

 

　2016年シーズンのビッグトレンドの1つとなるグラフィカルなストライプ柄がメイン。しなやかな木綿生地が特徴の伝統的な「小倉織」の布を復元し、大胆なストライプ柄をアレンジしたアーバンスタイルの日傘(i)。さらにマルチカラーストライプを組み合わせた斬新な16間のタッキースタイルの雨傘(j)まで、「線で遊ぶ」をテーマに取り入れやすいアイテムを展開する。

 

　カネイの注目は1枚張りによる表現だ。18世紀の貴族社会をイメージし、バラ一輪を大胆に描いた長傘(k)は周囲の目を引くだろう。一方、ニューヨーク在住の画家、久下貴史氏が描く人気の猫シリーズでは、画家がスペインを旅して描いた一作を、1枚張りに見えるように張り合わせて表現。転写プリントで絵画の質感までリアルに再現した秀作だ（l）。

 

　柴田は今季の新作として、いわゆる“ビタミンカラー”と呼ばれるビビッドなカラーのジャガード生地を使った、差すだけで気分が明るくなる雨傘を展開している。長傘は全て鉄骨を使い、傘としての耐久性、強度を重視（m）。持ち運びに便利な折りたたみ傘も提案する（n）。いずれも手元は生地と同色のものを使ったバイカラー（2色）で仕上げ、お洒落な雰囲気に。由緒ある甲州織のドット柄で、伝統と現代のテイストを調和させている。長傘は58㎝、折りたたみ傘は55㎝。

 

　高級紳士傘で定評のある市原からの今季の提案は、英国スタイルのトラッドなアイテム。1つは、こげ茶ベースの傘生地にパープルのロンドンストライプを組み合わせたトラディショナル感溢れる雨傘（o）。生地を2枚張り合わせたダブルフェイス生地を採用し、内側に見える傘骨は手元と同色にし、ファッション性を楽しめるように工夫している。もう1点は、英国を代表する伝統柄であるアーガイルを忠実に再現した雨傘（p）。白い手元とのカラーコーディネートはクレリックシャツを彷彿させ、こちらもファッション性が高い。いずれも65cmで紳士用としては適度な大きさ。

 

　モンブランヤマグチの代名詞でもある「ほぐし織」の傘。ほぐし織とは、たて糸がばらばらにならないようによこ糸を粗く織り（仮織）、その上から柄を手捺染。その後に仮織した緯糸を取り除き（この作業を「ほぐす」ということからほぐし織の名が付いた）、本織する日本の伝統技法。色や柄の柔らかさ、温かみ、奥行きが楽しめる。新作は、花をモチーフに大胆な柄を提案（q）。寒竹を使ったストレートの手元がエレガントな雰囲気を醸す。大きさは55cm。

 

　ブロンズは、トレンドを意識した洋傘を、買い求めやすい価格から高級路線まで幅広く展開している。昨季もラインアップした手書き風ボーダー柄は、今季カラーバリエーションを増やして提供（r）。キャラクターのライセンスを活かし、ドラえもんとハローキティをコラボレーションさせたデザインの雨傘も提案する（s）。一方、甲州織の日本製雨傘も展開（t）。落ち着きのあるチェック柄は、多くの女性の支持を集めそう。キャラクター傘や日本製の傘は、インバウンド向けにも人気が出そうな商品だ。