最新雨傘の新常識12

　　雨用の傘に紫外線防止加工を施し、日傘としても使える製品があり、春夏に1本持っておくと便利。日本洋傘振興協議会（JUPA）では、「晴雨兼用雨傘」もしくは「雨晴兼用傘」として分類している。さらに最近では光を遮る「遮光」や暑さを遮る「遮熱」加工を施したタイプも登場。メーカーによっては「全天候型」「オールウェザータイプ」などと呼ぶ。

　通常、雨傘は生地の表面に「はっ水加工」、裏面に「耐水加工」が施され、この二重の防御による「防水性」が雨粒の浸入を防ぐ。表面ははっ水剤に含まれる成分が毛羽立ち、ちょうどはすの葉の表面に細かい毛が密集しているのと同じ状態になり、水をはじく。裏面は樹脂のコーディングによって皮膜が張った状態になり、水を通さない。JUPA会員メーカーの傘であれば、はっ水、耐水の試験に合格した生地を使っているので安心だ。特に最近は防水性を高めた傘が登場している。店頭ではJUPAマークを目安に選びたい。

　近年、日本では降雨とともに強い風が吹き、傘があおられてしまうことが多くなっている。そうした厄介な風に対応し、例えば風で傘の骨がひっくり返ってしまい、おちょこのような状態になっても瞬時に元通りに復元できる「耐風傘」と呼ばれるジャンルの製品が最近増えている。特に技術力が高いJUPA加盟各社の製品であれば、高い耐風性が期待できるのでおすすめだ。

　日本の洋傘メーカーが企画し、中国など海外の工場で生産することが多い一方で、最近は日本国内の工場で生産するケースも増加。洋傘メーカーは製品のタグに「日本製」と表記しているので、店頭でも見つけやすい。もちろん、JUPA会員各社が委託している中国の工場は技術力が高く、厳密な管理の下、ハイレベルな製品を生産しているが、一方で、日本製の信頼性は世界的に高く、日本の消費者に加えて、外国からの訪日客にも人気を集めている。

　婦人用長傘のサイズは従来55～60cmが主流だったが、今季はより大きな65㎝のタイプも登場している。長傘は閉じて手元を腕に掛けて持ち歩く時に、石突きの露先が地面に付かないことが選ぶ際の目安の1つだが、石突きや手元が短く設計され、女性でも使いやすいサイズになっている製品もある。大判であればビジネスシーンや買い物で持っているカバンや荷物が濡れにくく、一定のニーズがありそうだ。

　最近は突然の雨に見舞われる場合が多く、常に折りたたみ傘を携帯したいというニーズが高まっている。JUPA加盟のメーカー各社は需要に対応するため、軽量化された製品を展開。スマートフォンや携帯電話より軽い100gを切るタイプも登場している。一方で、長傘も旅行者や高齢者を中心に「より軽いもの」を求める傾向が強く、軽さの追求は今後もトレンドとして継続しそうだ。

　雨傘選びでは、用途、機能、色や柄、サイズなどを考える必要があり、迷ってしまうことが多い。そうした時はJUPAが実施する洋傘の幅広い知識を問う試験に合格し、「アンブレラ・マスター」として認定された販売員がいる売り場に行くと良い。有資格者がいる店舗はJUPAのホームページ（http://www.jupa.gr.jp/）で検索可能だ。

　親骨の折れ、はじきの破損、中棒の抜け落ち、生地の破れや色落ちなど、ひと口に傘のトラブルといっても、さまざまなケースがある。JUPAに加盟するメーカーの場合、購入した百貨店の洋傘売り場や洋傘専門店に持ち込むと、修理に対応してくれる。一旦メーカーに送り、部品などを取り寄せて修理するため、3週間～1カ月以上かかるのが目安。露先が取れたり、中とじがほどけたりするなど軽微なトラブルなら、店頭で縫うなどその場で対応してくれる場合もある。一方で、スペアパーツが手配できず、修理できないケースもある。いずれにせよ、まずは購入店に相談してみるといいだろう。

　長く使い続けるために主に注意したい点は3つだ。1つは「ウォーミングアップ」。長傘の場合、急な雨で無理に開こうとすると、生地がからみ骨折れの原因になる。開く時は2～3回軽く振って生地をほぐしてから使いたい。もう1つは「陰干し」。使用後に濡れたまま放置すると、カビやはっ水機能の低下、骨のサビが生じやすくなる。直接太陽光に当てると生地の色褪せ、繊維や表面加工を痛める原因になるので、必ず陰干しして湿気を十分に取り除こう。最後が「ローテーション」。梅雨や長雨の時期に連続して使うと、生地に水分が残り、雨漏りしやすくなるため、2、3本を使い回すことが重要だ。

　傘の表面は加工が施されているため、なるべくなら拭くのは避けたい。しかし、汚れてしまいやむを得ず拭く時は、中性洗剤をぬるま湯に入れて薄め、スポンジに染み込ませてからポンポンと軽くたたくようにすると良い。終わったら必ず陰干しして乾かし、防水スプレーをかけよう（ただし、純パラソルは基本的に洗えない）。また、はっ水性が落ちたらドライヤーの熱風を当てるとはっ水表面が一時的に回復する（ドライヤー本来の使い方ではないため自己責任で十分に注意したい）。フッ素系のはっ水スプレーをかけるのも効果的。だが、いずれも回復は短期的だ。

　近年、レインウェアやレインブーツ、傘袋、レインバッグなど、傘以外のアイテムの充実が著しい。百貨店の洋傘売り場などにも、毎年多彩なアイテムが並び、女性にも人気だ。特に注目を集めているのが、傘と同じ柄でそれらのアイテムを展開し、トータルコーディネートを提案するブランドが増えていること。例えば、1面のQ&A「01」で紹介した「Jessie Steele」が同じバラの花柄のレインウェアやレインポーチ、レインバッグなどを展開。Q&A「03」で紹介した「CHRISTIANAUJARD」も、同じ色柄のレインウェアとレインバッグを提案する。他のブランドでもトータルコーディネートの提案例は多い。百貨店が開催する「レインフェア」などでぜひチェックしたい。

　ビジネスでもプライベートでも、着こなしに気を使う男性が増えており、JUPA加盟各社もそうした男性のニーズに応える洗練されたアイテムを数多くラインナップしている。特に今季は、男女を問わず流行しているビッグチェック柄や女性に人気の多間傘を紳士傘に採用したタイプなど、雨空の下で周囲から一目置かれるデザインが登場。今年こそは間違いのない1本をぜひとも手に入れたい。