パリ編
フランスの首都パリは月平均の降水量が45~65mm程度だ。ちょうど東京の1月、2月の月間降水量と同じ水準。日本のような梅雨や秋雨などによる変動はなく、一年を通して少雨で安定している。
雨とやや縁遠い土地柄であり、パリジャンやパリジェンヌは少しの雨では傘を差さないのが基本。「20年ほど前はカジュアルなファッションが流行していたため、ウィンドブレーカーのフードをかぶってやり過ごす人が多かった」と、現地在住の日本人女性は話す。「けれど、最近はシックな服装がトレンドであり、そのスタイルに合わせて傘を差す人は増えている」。
ではパリ市民はどんな傘を使っているのか。「機能性は二の次で、ブランド物などの高級路線か全くこだわらないかに二極化している」と、日本人女性は指摘する。ただし、高級路線と言っても柄物は好まず、無地やストライプが控えめに入ったものなどシンプルなデザインが人気だ。
実は、パリでは小学校などでカラーコーディネートの授業があり、スタイリングは「足し算ではなく、引き算」と教わって育つという。そのため、大人になっても主流の考え方は“シンプル・イズ・ベスト”。派手な柄やポップなデザインの傘を街角で見かけるのは稀のようだ。「大まかに言って、年配者は黒やえんじ、深緑などの傘。若者は安価な黒い傘、キャリアウーマンはシックな長傘。雨が少ないせいか、ちょっとした雨に手軽に使える折りたたみ傘の使用者も多い」(日本人女性)。
最近の話題は、日本製のビニール傘が店頭に並び出したこと。「しっかりしたものを長く使う」が身上のパリ市民も、安価、気軽で、前方が見やすいビニール傘の利便性を評価し始めたのかもしれない。お洒落なセレクトショップで見かけると言う。
一方、今パリでは日本の「弁当」が人気。日本食や漫画だけでなく、ファッションやアート、文学なども含めた日本文化への関心も高まっているようだ。日本文化は余計なものをそぎ落とす「引き算思考」が特徴の一つ。シンプルで上質な日本製の傘が、パリっ子に受け入れられる土壌は十分にあるのではないか。