マレーシア

2013.03.11

富裕層と日本の傘

 シンガポールに次ぎ早くから経済成長を遂げ、「東南アジアの優等生」と呼ばれているのがマレーシアだ。近年も経済成長率は4~5%で推移。首都のクアラルンプールの中心街には高さ452m、88階建ての「ペトロナスツインタワー」をはじめとする高層ビルが近接して建ち並び、まるで未来都市の様相だ。もはや途上国ではなく、先進な雰囲気に溢れている。
 1人当たりのGDPは1万ドルを超えたと見られ、2009年に25%だった富裕層(世帯別可処分所得が年3万5000ドル以上)は2015年には約半数になるという予測もある。首都では大型のショッピングセンターが至る所でオープンし、生活に余裕が出始めたマレーシア人たちが、こぞって買い物を楽しむ。それは日本の買物風景と全く変わらない。
 そんな発展著しいクアラルンプールの降水量は年間約2300ミリ、月平均約190ミリと多い。特に10月~3月の雨季には月300ミリ近くになることもある。降り方はバケツをひっくり返したようなスコールになることも多い。
 所得が多くなった現在では傘を使用する人も増えているようだ。現地に出張したT氏は次のように話す。「クアラルンプールで雨に遭遇したのですが、街の中心部で観察していると、6対4で差している人が多かったです。まだ雨宿りをしてやり過ごしたり、濡れるのに任せて歩いたりしている人もいますが、傘は随分普及している印象でした」。
 女性を中心にピンクや黄色、緑などカラフルな傘も目立ったという。そして、日本ではあまり目にしない企業のロゴが書かれた傘もたびたび見かけたそうだ。例えば「TOKIO MARINE」とロゴが入った傘。これは東京海上火災(現・東京海上日動火災)の傘だ。他にも地元企業や外資系企業のロゴ入りの傘がいくつか見られた。これは香港でもよく目にする光景だが、傘を広告媒体の一つと捉え、販促に使うという発想はアジアでは広く用いられているようだ。

一方、雨が降り出すとどこからともなく現れるのが傘の売り子。T氏も大量のビニール傘を手に道行く人に声をかける売り子を見たという。「値段は10リンギット(約300円)。よく見るとジャンプ傘であり、クオリティも悪くなさそうだった」。
 マレーシアは30年も前から「日本の経営手法や労働倫理を学ぼう」と“ルックイースト政策”が導入され、親日度は非常に高い。若者を中心に日本に対する憧れも根強い。日本で売られているようなデザイン性、機能性の優れた傘も、所得の向上と相まって、今後人気となる可能性は十分にあるだろう。


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