ブータン編

2009.06.01

伝統と規律を重んじるチベット仏教国都会ではルールを守りながら傘を使用


ブータンという国の場所をすぐにわかる人は少ないかもしれない。南はインドと、北は中国と国境を接し、ネパールやバングラディッシュとも近い、ちょうど九州と同様の広さの小国。チベット系民族が8割を占め、国教はチベット仏教。人口は約66万人と、東京都江戸川区と同じくらいの数だ。

 季節は雨季(5〜9月)と乾季(10月〜4月)があり、雨季には朝や夕方に激しいスコールが降る。旅人にとって、傘は必需品だ。首都ティンプーにある外資系高級ホテル「アマンコラ」などでは、各部屋に傘が常備されているほど。では、ブータン人の傘事情はどうか。

「傘はあまり差さないですかね。特に郊外や農村に住む人たちは、もっぱらフェルトで作った帽子などをかぶって、雨をしのいでいます。フェルトは原料の羊毛の脂分が雨粒をはじいて、いい雨よけになるようです」と、現地ツアーを企画する旅行代理店のスタッフは話す。
 日本とブータンの橋渡し役を担う、ブータン友好協会のスタッフも次のように説明する。
「農家の人たちは、それこそ葉っぱなんかを傘代わりに使っていますよ。それか、雨が降っているときは雨宿りをしてじっとやむのを待っている。スコールなので30分もすれば上がりますから」
 ただし、ブータンもティンプーなどの都会では、少し様相が異なる。旅行代理店スタッフが指摘する。
「雨季の雨量は本当に多いから、どうしても移動する必要がある人の中には傘を差している人もいますよ。だいたいが無地の黒。でもそうした人たちも、傘を差すことが不遜にあたる役所や寺への訪問時には差しません」。傘を使うにもルールが決まっていて、それを国民は忠実に守っているようだ。
 ブータンでは近代化推進の一方で、伝統や規律も重んじている。そして、有名なのは、国の豊かさを計る尺度として、GDP(国内総生産)ならぬ、 GNH(国民総幸福量)を用いていること。急激な変化を求めず、独自の国づくりに挑むブータンでは、傘の普及もスローなのである。

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