台湾編

2004.01.01

雨に煙る街は“珍傘”、“発明傘”の宝庫


熱帯から亜熱帯気候に属する台湾の夏の日差しは半端ではない。特に熱帯気候の南部は、ジリジリと焼きつくような熱射地獄。しかも、日本と同様に夕立が多い。だから夏の間、台湾人にとって傘は必須アイテム。日傘ではなく、雨傘を持ち歩き、快晴のときは日傘として、降雨のときは雨傘として、頭上に差しているのが真夏の一般的な光景だ。

また冬は冬で雨季シーズンを迎えるので、傘は必需品。さすがに日除けに使う機会はないが、雨が降り続くときは毎日携行するパートナーとなる。台湾人と傘は陰に陽に深い関係で結ばれているようだ。
そんな“傘王国”台湾で女性が好んで使うタイプが折り畳み傘だ。「バックに入れて手軽に持ち歩けるのが人気の秘訣。しかも南国らしく色柄の派手なものを持つ人が多い」と現地在住の日本人女性Mさんは指摘する。また、長傘では骨の数が通常の倍以上の20本にも上る唐傘のようなレトロタイプも人気。シックからカラフルまでカラーバリエも豊富に揃い、キレイ目の小姐(若い女性)が粋に広げている姿をよく見かけるとか。かなり大振りの傘なので女性が差している様子は想像しにくいが、隣国とはいえ、国境を越えるとオシャレの感覚やトレンドもかなり趣が変わってくるようだ。
さらに、街に奥深く潜入すると、完全に想像を絶する“珍傘”に巡り会える。先端(石突)に大小のコップを重ね合わせたような不可思議な異物を備えた長傘がその張本人。傘を畳んでコンパクトに収納されたコップを引っ張り出すと、まるで蛇腹のように伸びて濡れた傘をすっぽりと覆う。床を水浸しすることはないし、周囲の人に水滴を撒き散らすこともない。しかも、コップ部分を調節すれば、溜まった水を吐き出せる。まさに品行方正、グッドマナーな傘なのだ。「その名も『不滴水傘』。台湾人が発明したと聞いています」とMさん。デパートやレストランに入ってもビニール袋が不要な優れモノからは、周囲を気遣う台湾人の国民性が伝わってくる。
韓国では利用者が多く台湾でもよく見かけるという、荷物を持っているときに便利な自動開閉式の折り畳み傘も、実は台湾人の発明品だと言う人もいるとか。降雨量が年間2千ミリを超え、自然と雨との付き合いが長くなる台湾では、生活シーンに配慮した“発明傘の宝庫”であり、それは廃れることなく、今でも台湾人の日常に脈々と息づいている。

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