タイ・バンコク編

2002.10.01

「マイペンライ(気にしない)」では済まされない傘事情


5月中旬から10月にかけて、バンコクは長い雨期に入り、夕方になると強烈なスコールが降ることが多い。それでも1997年頃は、傘をさしている人など見かけることはほとんどなかった。人々は皆、付近の店や道端の軒先に入るなどして、雨をやり過ごしてから次の目的地へと向かっていた。
ところがここ2〜3年、雨天の時に傘をさす人が急速に増えてきたという。特に多いのは都心部のオフィスに勤務する若い女性。「雑誌や封筒を傘代わりにしている女の子はほとんど見かけなくなりましたね」と、某商社現地駐在員・M氏は証言する。
彼によると、タイ人がさしている傘の大半は100バーツ〜200バーツ(約300円〜600円)の国産品。なかでも折り畳み傘の普及がめざましく、つい先日もガソリンスタンドで折り畳み傘をプレミアムグッズとしたキャンペーンを行っていたとのこと。
ちなみにいわゆるビニール傘はバンコクでは全く見かけないそうだ。また、ごく一部だが、普通の雨傘を晴れた日に日傘として使っている女性もいるとか。
傘をさすというのも急速にファッション意識が高まっているタイの女性の身だしなみの一部になりつつあるようだ。インターネットで海外ファッション情報にもすぐにアクセスできるようになってきたのも大きく影響していると思われる。
「1999年にBTS(高架鉄道)が開通してから、傘を持っている人が増えたような気がする」と語るのは、バンコク在住10年近くになる日本人女性・Rさん。
「バスと違って、雨が降っても渋滞に巻き込まれることがない。傘さえあれば時間通りに行動できると考えるようになったのでは」というわけ。
BTSに象徴されるタイの経済成長と傘との関係について次のようにも推論する。
「多分以前は、雨が降ったら傘なんてささずに、止むまで待っていても支障のない人が多かったんでしょう。支障があるような仕事をしている人は車で動いていたのではないか。要は中間層が増えてきた、ということだと思う」
もはや雨を理由に無為な時を過ごして、「マイペンライ(気にしない)」では済まなくなったということか。情報と経済、この2つがバンコクの人々に傘を持つことを求めている。

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