かさ さしてあげるね

2010.03.01
「かさ さしてあげるね」文:はせがわせつこ 絵:にしまきかやこ
(福音館書店・1998年4月刊)

 初版から10年以上経過しているが、未だに売れ続け、20刷を突破するなど異例のロングヒットとなっている絵本である。

 大手書籍通販Webサイトのレビューにも、母親からの絶賛の声が多々寄せられるほどの人気ぶりだ。

 文を担当する長谷川摂子氏は東大大学院哲学科を中退後保育士として働き、その後学習塾を運営する傍ら作家活動に も取り組む異色のストーリーテラー。短編を収録した小学校高学年以上スペイン編雨量によって雨具を合理的に使い分け 向けの童話集「人形の旅立ち」で、第19回坪田譲治文学賞、第14回椋鳩十児童文学賞、第34回赤い鳥文学賞を受賞するな ど、児童文学作家としての評価も高い。

 「かさ さしてあげるね」は0〜 2歳児向けの絵本だ。自由奔放で大胆なタッチの絵に、愛らしい文章が寄せられている。 登場するのは、ゾウ、キリン、アリ、そしてクマ。雨が降り、それぞれの背中に雨粒が当たるが、その音がユニークだ。 ゾウの背中には「ピッチャン パッチャン」、キリンは「ピロリン ポロリン」、アリには「ピピポポ」、クマは「シッポ シャッポ」。読み手から発せられる擬音に興奮する乳幼児の姿が目に浮かぶ。

 そして雨に濡れる動物たちに、1人の男の子が「かさ さして あげるね」と言って、体の大きさに合った傘を差しかける。  ゾウは横に大きな傘、キリンは中棒が長い傘、アリは小さな傘……。最後のクマはお礼にだっこをしてくれた。リズム感 のある展開に子供も釘付けになるだろう。

 大好きな動物を通して傘を身近に感じることができるのもこの絵本の特徴。自分の子供に読み聞かせるもよし、出産祝 いに贈るもよしの秀作である。

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