かさの女王さま

2008.03.01
「かさの女王さま」シリン・イム・ブリッジズ作 ユ・テウン絵 松井るり子訳
(セーラー出版・2008年12月刊)

 本作は、原作者のシリン・イム・ブリッジズが米国カリフォルニア生まれの中国系アメリカ人、絵を担当したユ・テウンがニューヨーク在住の韓国人、そして、訳者は岐阜県生まれの日本人という、アジアンハイブリッドな絵本だ。日本の絵本にはあまり見られないストーリー展開、独特なタッチの絵など、新鮮な要素が満載の作品である。

 絵本の舞台はタイの山あいにある村。そこでは、女性が何百年もの間、かさに「花と蝶」という伝統の絵柄を描いている。そして、毎年正月には最も巧みな絵付けをした女性を「かさの女王さま」に選び、その女性を先頭に盛大な行列が村を練り歩く。

 その「かさの女王さま」に憧れるのが主人公の小さな女の子だ。女の子は母親から初めて絵付けのチャンスを与えられ、手本を見ながら花と蝶を描く。しかし、そのうち、思わず自分が好きな動物であるゾウを描いてしまう。両親はそんな女の子に手本どおりに描くように諭す。がっかりする女の子。だが、その後も時間を見つけては、自分で作った小さなかさに、ゾウの絵を付けていく。

 ある日、王様が村を訪れ、「かさの女王さま」を選ぶことになる。1つ1つ丹念に見る王様。その目に女の子の“ゾウのかさ”がとまる。果たして王様が下す決断とはいかに…?

 長年の慣習や決まりごとに捉われず、ときには自分に素直になり、心のままに行動してみる。その大切さを子供だけでなく、絵本を読み聞かせる大人にも説いているように見える。結末は実際に絵本を開いて、ぜひ親子で楽しんでほしい

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