かさどろぼう

2007.09.25
「かさどろぼう」 作・絵:シビル・ウェッタシンハ 訳:猪熊葉子
(徳間書店・2007年5月刊)

 興味をそそられるタイトル。表紙には極彩色の大きな傘が描かれている。そこには確かに日本の絵本作家には見られない、南アジアの香りが充満している。

 作品の生みの親は、1928年スリランカ生まれのシビル・ウェッタシンハ氏。同国を代表する絵本作家である。一方、訳者は猪熊葉子氏。聖心女子大学文学部教授を務め、児童文化功労賞も受賞した、児童文学の権威。くしくも誕生年はウェッタシンハ氏と同じ1928年である。

 内容は実にユニークだ。舞台はスリランカの小さな村。そこで生活する1人のおじさんが主人公。傘のないその村で村民は、雨が降ればバナナの葉っぱなどを傘代わりにし、しのいでいた。

 ある日、おじさんは生まれて初めて町に出た。そして、「傘」を目にしたのである。おじさんは村民に見せびらかそうと考え1本購入。意気揚々と村に戻る。しかし、コーヒー店でひと休みしている間に、何と大事な傘が盗まれてしまった。その後何度も町で傘を購入し持ち帰るが、決まってその店で傘は消える。

 この意外なストーリー展開に子どもが食いつくことは必至。犯人探しの末に迎える最後のどんでん返しを親子で存分に楽しみたい。

ページトップへ

  • 街角傘美人
  • アンブレラマスター紹介
  • アンブレラ・マスターがいるお店