風に舞いあがるビニールシート(第135回直木賞受賞作)

2006.10.01
森絵都
(文藝春秋・2006年5月刊)

 昨年「傘のブック・レビュー」で紹介の森絵都さんが見事「直木賞」受賞!

 昨年、「傘のブック・レビュー」で紹介した「いつかパラソルの下で」(角川書店・2005年4月刊)の著者、森絵都さんが、今年7月の第135回直木賞選考会で見事、直木賞に選ばれた。受賞作は「風に舞いあがるビニールシート」。表題を含む6つの物語で構成された短編集だ。各物語の主人公の共通点は、融通のきかない性格で、内面に大きな葛藤を抱えていること。しかし、あるきっかけで厚い壁を突き破り、人間として大きく成長する。また、作品の所々で「雨」により主人公の感情の機微を巧みに暗示している点も注目に値する。そうした天気と心の変化を重ねる技法も一興だ。

 一方、第133回直木賞の候補作ともなった「いつかパラソルの下で」でも、主人公は生きることに不器用で心に傷を持つ。だが、現実をすべて受け入れることでそれを克服。その心が晴れ晴れとしたシーンに象徴的に「日傘」が登場する。

 こうしてみると、雨や傘は森絵都さんの作品に欠かせない“名脇役”ともいえる。今後の作品、そして雨、傘の更なる活躍に期待したい。」

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