パイプのけむり1
2004.08.01
團伊玖磨(朝日新聞社・1965年11月刊)
日本を代表するクラシック音楽の作曲家である團伊玖磨は、名エッセイストとしても知られる。特に昭和39年から写真誌「アサヒグラフ」で連載されたエッセー『パイプのけむり』が有名で、このエッセーは後に単行本化され、その数は全27巻にものぼった。『パイプのけむり1』はこの最初の1巻目。そのなかに「傘」と題した作品があり、傘と筆者の関わりがユーモアを交えて述べられている。
著者は傘の忘れ物が非常に多い。あまりにそれがひどいため、家族が外出時に傘を渡さなくなるほどだった。
仕方なく豪雨でも傘を持たずに出かけるようになるのだが、そんな事情がある雨の日に飛び込んだ傘屋で、店番の爺さんとの出会いで少し変わる。
「カサ(傘)ないかね?」という著者の言葉に、「カサっ気(瘡っ気)は買うもんだよ」と洒落返す爺さん。古風な江戸の話も得意な好々爺に著者は魅力を感じ、その後も、度々その店を訪れるようになる。いつも決まって雨の日、傘を持たずに。そして爺さんの話に耳を傾けては、傘を買っていく。傘の忘れ物がもたらした、小さな縁に楽しみを見出す。そんな著者の姿もまた粋。傘屋には下町の風情があったのだ。
團伊玖磨(朝日新聞社・1965年11月刊)
日本を代表するクラシック音楽の作曲家である團伊玖磨は、名エッセイストとしても知られる。特に昭和39年から写真誌「アサヒグラフ」で連載されたエッセー『パイプのけむり』が有名で、このエッセーは後に単行本化され、その数は全27巻にものぼった。『パイプのけむり1』はこの最初の1巻目。そのなかに「傘」と題した作品があり、傘と筆者の関わりがユーモアを交えて述べられている。
著者は傘の忘れ物が非常に多い。あまりにそれがひどいため、家族が外出時に傘を渡さなくなるほどだった。
仕方なく豪雨でも傘を持たずに出かけるようになるのだが、そんな事情がある雨の日に飛び込んだ傘屋で、店番の爺さんとの出会いで少し変わる。
「カサ(傘)ないかね?」という著者の言葉に、「カサっ気(瘡っ気)は買うもんだよ」と洒落返す爺さん。古風な江戸の話も得意な好々爺に著者は魅力を感じ、その後も、度々その店を訪れるようになる。いつも決まって雨の日、傘を持たずに。そして爺さんの話に耳を傾けては、傘を買っていく。傘の忘れ物がもたらした、小さな縁に楽しみを見出す。そんな著者の姿もまた粋。傘屋には下町の風情があったのだ。