傘 和傘・パラソル・アンブレラ

2003.05.15
「傘 和傘・パラソル・アンブレラ」制作・(株)INAX
(INAX出版・1995年9月刊)

 インテリアや建材などの事業を手がける?INAXでは、1982年から現在まで20年以上にわたり、建築や生活文化をテーマとする展覧会を行っている。

 この展覧会プロジェクトの一環として1995年9月には、名古屋で傘に関する展覧会が開催された。「実用品であるがゆえに深く知ることのなかった『傘』の歴史と図像学を改めて考える」というのがその主旨。古代から中世、現代の絵画などに見られる傘についての考察や、日本に洋傘が広まっていく過程等が紹介された。日本洋傘振興協議会も取材や資料提供などで協力している。

 この企画展の成果をまとめたものが「傘 和傘・パラソル・アンブレラ」。現在でも大手書店等で手に入れることができる。

 この冊子によると、19世紀を中心に、産業革命の恩恵を受けて女性の服装が華やかになっていく中、パラソルも必携アクセサリーとして市民権を獲得していったという。ただ、この頃のパラソルは当時流行した釣り鐘型のスカートを覆えるほどには大きくなく、あくまでアクセサリーとしての意味合いが強かったようだ。また、パラソルの流行を、「女性が戸外へ出るようになり、開放されていったことの象徴」とする考察も見られる。これらのことが、著名な絵画からも読みとれるというわけだ。

 日本における傘、特にパラソルの歴史についてはどうか。明治期には西欧から輸入されたものがそのまま用いられていたが、大正・昭和初期には和服との調和を図って友禅染や金糸、銀糸が多用されたものが国産でもみられるようになる。その後、洋服が普及してきた昭和10年代からレース素材なども用いられ、再び洋服向きのものへと変化する。このようにパラソルは、和洋折衷を経ながら普及してきた跡が見てとれるという。

 INAX出版では、本書によって生活文化における傘の位置付けや、国による傘の違いなどを再考しようとしたという。数多く紹介されている傘やパラソルの写真も含め、今なお貴重な資料であることが分かる一冊だ。古いパラソルの写真はそれ自体、大きな資料価値がある。手元だけでも奥深い世界があることが分かる。

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