今日という日の使い方(雨の日を心から楽しめる傘をさそう)

2003.03.01
加藤諦三著
(三笠書房・2002年5月刊)

 心理学者でもある著者、加藤諦三は、心理学的側面からよりポジティブに生きる方法を示唆する著作の数々でも知られている。しかも、しゃちほこばったアカデミックなものではなく、どこか優しい視線が感じられる、とっつきやすい内容のものが目立つ。

 本書もそんな一作である。「今日の使い方」「今月の使い方」「今年の使い方」と期間を3つに区切り、“元気になる”ためのヒントが紹介されている。

 人生で行きづまったりしたときには、ただ落ち込んでいるのではなく、自分を前向きにさせるような小さなことで構わないから始めてみることで、自分自身に新たな変化が訪れると説いている。

 例えば「一日一回笑顔をかわす」といった簡単なことでもいい。

 そんな“元気になる”方法が1日、1ヶ月、1年と期間がのびるごとに膨らんでいく。読み進めれば読み進めるほどに、書かれていることが違和感なく受け入れられるようになってくる。いつしか湧いてくる小さな希望や自信は、著者からの素適な贈り物だ。

 そんな本書のキャッチコピーは、「雨の日を心から楽しめる傘をさそう」というもの。しかし、この本のなかで実際に“雨の日の傘”について書かれている部分は1ページに満たない。

 「雨の中を『大きな傘でレインシューズ』という完全装備で歩く」というところだけ。

 にもかかわらず、その部分がキャッチコピーとして使われていることに意味があるように思う。

 雨の日を憂鬱と思えばふさぎ込んでしまうが、「心から楽しめる」方法もある。一本の傘がちょっとした魔法の杖になることもあるのだ。

 しかしこの部分が心疲れた人に向かって、「心の中で傘をさせ」と励ましているように聞こえるのは私だけであろうか。 

ページトップへ

  • 街角傘美人
  • アンブレラマスター紹介
  • アンブレラ・マスターがいるお店