辻屋 稲橋秀郎さん
2012.03.27
Q.どのようなお店ですか?
A. 創業は昭和元年頃、祖父が関東大震災後に独立し、中野に店を構えました。店名は祖父が埼玉県にある「辻」という所の出身だったことに由来します。当初は下駄・草履・傘を扱い、時代とともにサンダルや靴を販売するようになりました。祖父の話では昔は男女とも無地の木綿傘を扱い、戦後ナイロン・ポリエステル・ビニールなどの生地ができたことで、劇的に色や柄(がら)、デザインが増えたそうです。
Q.傘の品揃えは?
A. 価格帯は、安価なタイプから、5000円~3万円くらいまで。高級傘、ブランド傘、限定の傘、オリジナル傘、キッズ傘など多岐にわたり揃えています。和装好みの方向けに、番傘、蛇の目傘の扱いもあります。
Q.商品の仕入れの担当は?
A. 皆の意見を取り入れ、私と母が中心に選んでいます。メーカーには、互いの意見に影響を受けないように、別々に行き、商談しています。その方が、商品のバリエーションが広がるからです。ただし、私は渋い色を選ぶ傾向があり、逆に母は色目の明るい、キレイなものを選びます。母はミセスの方が求める傘を、感覚的に理解しており、やはり一日の長があります。
Q.お客様の傾向を教えてください。
A. 主に地元のお客様が多いですね。中野は新宿のような繁華街ではないが、田舎ではない。武蔵野でありながら、下町の雰囲気もある。個人的には東西の文化が融合する、外国でいえば、トルコのイスタンブールみたいな町だと思っています。だから、住んでいる方も多彩。お店にも老若男女を問わず、様々な方が来店されます。
Q.常連の方も多そうですね。
A. 常連の方は気軽に店を訪れ、「何かある?」と聞いてきます。私も、「こんなのが入ったけどどうですか?」と薦めることもあれば、わざと定番の傘の中に紛れ込ませておき、その方が見つけるのを待つこともあります。店頭に出さずに、店の奥から持ってくることもあります。昔の店は、上物は何でも奥から出てくるのがセオリーでしたからね(笑)。このお客様とのちょっとしたやり取りや駆け引きが楽しいです。
Q.アンブレラ・マスターを取得しようと思ったきっかけは?
A. 知識を得るためと、お客様に安心していただくためです。傘にそれほど詳しくない方も、反対に傘にこだわっている方も、アンブレラ・マスターなら安心して相談できると思っていただけることがメリットでしょう。
Q.傘の修理も対応されているようですね。
A. ハト目による骨の接合や口とじ、中とじなど簡単な修理であれば、私が対応し、骨折れなどは契約している職人に依頼します。できる限りのことはしますが、できない場合はお断りすることもあります。いずれにせよ、修理はサービス価格か、適正な価格で対応しているので、ご相談いただければと思います。
色目の明るい傘、内側に虎が描かれた高級紳士傘、猫のイラスト傘など、様々。
ゆっくり話をしながら、お客様にはどんな傘が合うのか、一緒になって、精一杯考えます。悩んでいるときもアドバイスをするというより、「どうしましょうかね」と、ともに頭を悩ます。答えは私の中ではなく、お客様の中にあるからです。だから、「本当はどんな傘が欲しいのか」をお客様から引きだすために、徹底的にサポートする。それが当店のスタンスです。とはいえ、自分が好きな傘だと思わず勧めちゃうこともありますけど(笑)。
サポートするには知識が必要なので、祖母に教えてもらい、職人の手ほどきを受け、アンブレラ・マスターの取得などで磨きをかけてきました。そうやって準備して接客に臨み、お客様にピッタリの商品を提供でき、喜んでいただけた時が何より嬉しいですね。
また、良い傘であれば、金額に関係なく買うという方もいます。素人さんはわからなくていいから玄人さんが好む傘を仕入れてきて、と言います。そして、気に入ると3本あれば3本買っていかれます。その方は、スーツの時に和傘を差し、和装の時に洋傘を差す。まるで大正ロマンのような格好ですが、ファッションに一本筋が入っているので、非常にカッコいいです。
傘と帽子を合わせるおしゃれな方もいます。4万円の特注の傘を購入されるお客様もいる。皆さん、傘をファッションアイテムとして、遊び心を持って楽しんでいます。これからも、傘好きの方を満足させる商品を提供する――。そんな傘屋であり続けたいですね。
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※記事の内容は2012年3月現在のものです。
中野駅北口駅前から延びるサンモール商店街。昼夜を問わず多くの人で賑う通りの右手に、傘と履物の店「辻屋」はあります。店内は基本的に、左側と上に傘、右側と下に靴・下駄・草履と、分類・整理されています。おしゃれな傘と気の利いた会話を求めて、地元民を含め、多くの常連客が訪れる、商店街唯一の専門店です。
Q.どのようなお店ですか?
A. 創業は昭和元年頃、祖父が関東大震災後に独立し、中野に店を構えました。店名は祖父が埼玉県にある「辻」という所の出身だったことに由来します。当初は下駄・草履・傘を扱い、時代とともにサンダルや靴を販売するようになりました。祖父の話では昔は男女とも無地の木綿傘を扱い、戦後ナイロン・ポリエステル・ビニールなどの生地ができたことで、劇的に色や柄(がら)、デザインが増えたそうです。
Q.傘の品揃えは?
A. 価格帯は、安価なタイプから、5000円~3万円くらいまで。高級傘、ブランド傘、限定の傘、オリジナル傘、キッズ傘など多岐にわたり揃えています。和装好みの方向けに、番傘、蛇の目傘の扱いもあります。
Q.商品の仕入れの担当は?
A. 皆の意見を取り入れ、私と母が中心に選んでいます。メーカーには、互いの意見に影響を受けないように、別々に行き、商談しています。その方が、商品のバリエーションが広がるからです。ただし、私は渋い色を選ぶ傾向があり、逆に母は色目の明るい、キレイなものを選びます。母はミセスの方が求める傘を、感覚的に理解しており、やはり一日の長があります。
Q.お客様の傾向を教えてください。
A. 主に地元のお客様が多いですね。中野は新宿のような繁華街ではないが、田舎ではない。武蔵野でありながら、下町の雰囲気もある。個人的には東西の文化が融合する、外国でいえば、トルコのイスタンブールみたいな町だと思っています。だから、住んでいる方も多彩。お店にも老若男女を問わず、様々な方が来店されます。
Q.常連の方も多そうですね。
A. 常連の方は気軽に店を訪れ、「何かある?」と聞いてきます。私も、「こんなのが入ったけどどうですか?」と薦めることもあれば、わざと定番の傘の中に紛れ込ませておき、その方が見つけるのを待つこともあります。店頭に出さずに、店の奥から持ってくることもあります。昔の店は、上物は何でも奥から出てくるのがセオリーでしたからね(笑)。このお客様とのちょっとしたやり取りや駆け引きが楽しいです。
Q.アンブレラ・マスターを取得しようと思ったきっかけは?
A. 知識を得るためと、お客様に安心していただくためです。傘にそれほど詳しくない方も、反対に傘にこだわっている方も、アンブレラ・マスターなら安心して相談できると思っていただけることがメリットでしょう。
Q.傘の修理も対応されているようですね。
A. ハト目による骨の接合や口とじ、中とじなど簡単な修理であれば、私が対応し、骨折れなどは契約している職人に依頼します。できる限りのことはしますが、できない場合はお断りすることもあります。いずれにせよ、修理はサービス価格か、適正な価格で対応しているので、ご相談いただければと思います。
当店で人気の傘
色目の明るい傘、内側に虎が描かれた高級紳士傘、猫のイラスト傘など、様々。
アンブレラマスター傘への思い
答えはお客様の中にある
常連のお客様も含めて、うちには話をしに来る方が非常に多いですね。母との会話を楽しみに来店されるミセスの方も多いです。町の傘屋であり、履物屋なので、それでいいと思っています。ゆっくり話をしながら、お客様にはどんな傘が合うのか、一緒になって、精一杯考えます。悩んでいるときもアドバイスをするというより、「どうしましょうかね」と、ともに頭を悩ます。答えは私の中ではなく、お客様の中にあるからです。だから、「本当はどんな傘が欲しいのか」をお客様から引きだすために、徹底的にサポートする。それが当店のスタンスです。とはいえ、自分が好きな傘だと思わず勧めちゃうこともありますけど(笑)。
サポートするには知識が必要なので、祖母に教えてもらい、職人の手ほどきを受け、アンブレラ・マスターの取得などで磨きをかけてきました。そうやって準備して接客に臨み、お客様にピッタリの商品を提供でき、喜んでいただけた時が何より嬉しいですね。
傘好きを満足させる商品を
本当に傘が好きな方と接することができるのも、この商売の魅力です。ある若い男性は、最初の来店時に手頃な普段使いの傘を購入し、徐々に値段が高い傘を買われ、最終的に1万円の真っ黒の傘を購入。傘にこだわりのない人から見れば、普通の傘です。しかし、その方は、昔のコウモリ傘さながらの深張りのフォルムが気に入り、使ってみて「雨音が違う」と、喜んでくれました。また、良い傘であれば、金額に関係なく買うという方もいます。素人さんはわからなくていいから玄人さんが好む傘を仕入れてきて、と言います。そして、気に入ると3本あれば3本買っていかれます。その方は、スーツの時に和傘を差し、和装の時に洋傘を差す。まるで大正ロマンのような格好ですが、ファッションに一本筋が入っているので、非常にカッコいいです。
傘と帽子を合わせるおしゃれな方もいます。4万円の特注の傘を購入されるお客様もいる。皆さん、傘をファッションアイテムとして、遊び心を持って楽しんでいます。これからも、傘好きの方を満足させる商品を提供する――。そんな傘屋であり続けたいですね。
店舗紹介
辻屋
住所:東京都中野区中野5-60-8
TEL:03-3388-5123
アクセス:JR中野駅北口徒歩3分
ホームページ:http://www.nakano-tujiya.com
概要:昭和元年創業の傘と履物の店。自分に合った傘を、店員と話をしながら、時間をかけて選べるのが魅力。プレゼント用途の高級傘を買い求める人も多い。
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※記事の内容は2012年3月現在のものです。