きいろいかさ

2010.10.01
「きいろいかさ」リュウ・チェスウ作・絵 シン・ドンイル作曲
(メディアリンクス・ジャパン・2010年6月刊)

 韓国ソウル市に生まれ、絵本作家として活躍するリュウ・チェスウ氏が手がけた作品だ。本書は世界中で高く評価され、2002年にはニューヨーク・タイムズの「世界の優れた絵本10選」、国際児童図書評議会の「障害のある子どものための最良図書」などに選出された。

 絵本を開いて気づくことがある。文字がないのである。画面にあるのは家から出てきた1つの黄色い傘だけだ。その様子をちょうど上空から眺めている俯瞰視点で描かれている。そして、ページをめくると、黄色い傘と同じく家から出てきた青い傘が一緒になり、次は赤い傘が合流する。緑、オレンジ、ピンク、紫と、次から次へと傘の数は増え、カラフルな一団は公園を通り、商店街を抜け、横断歩道を渡り、ようやく学校に着く。そう、雨の日の子どもの登校風景を描いていたのだ。

 文字がないので、基本的には無音の世界だ。だが、じっと眺めていると次第に音が耳にこだましてくる。雨の音、雑踏、子どもたちの笑い声。傘の本数が増えるごとに賑やかさが増す。無音の世界は想像の音で満たされていくのだ。作者は、「美しい色の楽しいリズムがこの絵本の特徴」という。絵本を見ている子どもはきっと雨の日が待ち遠しくなり、大人は童心に返ることだろう。

 絵本にはCDが付いている。雨の音などをモチーフに作曲されたピアノ小品集だ。カラフルな傘が視覚的に奏でるリズムと、ピアノがつむぎだすシンプルな音色は、心の中で見事に調和し、また違った世界へと誘ってくれる。親子で想像の海を存分に楽しんでもらいたいものだ。

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