ぼくはかさ

2006.03.01
「ぼくはかさ」作・絵 せなけいこ
(ポプラ社・2005年11月刊)

 貼り絵絵本という新境地を開いた絵本作家・せなけいこが、傘を主人公に創造性とユーモアをたっぷりに描いた秀作。

 せなけいこの作品には、自身の子供が好きだったせいもあり、よく「おばけ」が登場する。代表作「めがねうさぎ」でも名脇役として物語を盛り上げているが、「ぼくはかさ」にも多聞に漏れず“化けて”出ている。

 持ち主の男の子に、雨の日だけでなく晴れの日も肌身離さず持ち歩かれるほど大切にされ、幸せな日々を送っていた傘。しかし、ある日を境に男の子はおばけのテレビや本に夢中になり始め、見向きもしなくなる。寂しくて涙を流す傘。濡れていると勘違いしたお母さんが外に干すと、風に吹かれて空へ。傘は風に揺られながら思い立つ。「おばけになろう」。

 早速おばけに弟子入り志願。唐傘おばけやちょうちんおばけ、ひとつ目小僧、ろくろっくびなどの指南で、見事に変身し、男の子のもとに戻る。様変わりした相棒を見て男の子も大喜び。またもとの仲良しに戻るというストーリーだ。

 子供が大好きなおばけの登場。かさがおばけに変身するという意外性のある展開。さすがに好奇心を掻き立てるツボを巧みに押さえている。読み終える頃にはおばけに親近感を覚えるとともに、傘を大切に思う気持ちも育まれているに違いない。

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