おじさんのかさ

2004.06.01
「おじさんのかさ」作・絵:佐野洋子(講談社・1992年5月刊)

 自分の傘を大切にし過ぎるあまり、まったく傘を開こうとしない「おじさん」を描いた物語。話題作『100万回生きたねこ』などで知られる絵本作家・佐野洋子の作品で、1974年の初版発行(銀河社)から、かれこれ30年間も読まれているロングセラーだ。

 主人公は黒くて細い立派な傘を大事にしているおじさん。出かけるときは必ず持ち歩くほどだが、その愛情は少々度が過ぎている。雨が降っても傘が濡れないように自分の傘は開こうともせず、他人の傘に入れてもらったりするのだ。

 そんな頑固なおじさんに、“一大転機”が訪れた。とある雨の日、公園で見知らぬ男の子が友だちの傘に入れてもらい「あめがふったらポンポロロン」と歌うのを聞いてしまったのだ。それが本当かどうか、どうしても気になるおじさん。ついに自分で傘を開く——。
「ほんとだ ほんとだ、あめが ふったらポンポロロンだあ。」 おじさんは静かに喜びを味わいながら歩き出す。初めて傘を差しながら人混みを歩く姿は、少し緊張気味でぎこちない。思わぬ喜びは、時に人を挙動不審にする。 帰宅後も傘を見てうっとり。満ち足りたおじさんと傘の物語は、さしあたりこれで完結する。

 続編は・・・余韻を楽しみながら、皆さんの心の中で描いてみてはいかが?

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