オーストリア編

2011.03.01

ザルツブルクが誇る傘の老舗


オーストリアはヨーロッパ中部にある人口約830万人の国だ。かつて中欧を支配したハプスブルク家が残した歴史的遺産が数多く点在し、東部のウィーンは昔も今も世界一の音楽の都である。また、中央部のザルツブルクもモーツァルトの生誕地であり、世界的な音楽祭が開催されるなど、音楽のメッカとなっている。
雨については、ウィーンは少なく、ザルツブルクがよく降る。ザルツブルクは「雨の街」とも言われ、特に6月、7月は梅雨の東京よりも降雨量が多くなる。オーストリア観光局のスタッフは、「ザルツブルクの観光ガイドが毎日傘を手放さず持っているくらい、頻繁に雨は降る。どしゃぶりではなく、細い雨が一日中降り続くようなイメージ」と説明する。
雨の街には老舗の傘メーカーもある。1903年にザルツブルクの旧市街で最も賑やかな目抜き通り「Getreidegasse(ゲトライデガッセ)」に店を構えた「Kirchtag(キルヒターク)」である。開業以来手作りにこだわり、今も伝統の技を継承し、手元や骨をクラフトマンが一つひとつ丹念に仕上げている。
ただし、多くのオーストリア人が、そうした伝統的な高級傘を使用しているわけでは、もちろんない。オーストリア大使館のスタッフは、「黒っぽい無地の傘が一般的であり、オーストリア人は体が大きいので、それに合わせて大寸のものを使う人が多い。私は現地に行ったときに日本製のコンパクトな折りたたみ傘を使っていたが、オーストリア人は、『こんなに小さくて軽量な傘が世の中にはあるのか』と、ビックリしていた」と話す。
あるいは、他の欧州諸国人と同様に少々の雨なら傘を差さず、フードをかぶったり、レインコートを着たり、はたまた無防備で濡れるのを気にせず歩く。
それにしても、傘に携わるものにとって、傘の老舗「Kirchtag」は興味深い。ザルツブルクを訪れる機会があれば、店にはぜひ足を運びたいところだ。店頭に掲示している傘屋を示す鉄製の看板が目印である。



 

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